思いをお届けできますように

ありがとうを伝えたくて。

動けないまま、ずっと生きていた男の子の魂。

感覚のほとんどが失われていた日々の中で、

たったひとつ、確かに感じられたもの――

それは、あなたの手のぬくもりでした。

言葉にならなかった想い。

ずっと伝えたかった「ありがとう」を

この物語にこめてお届けします。

🌿 看護師さん、医療に関わるすべての方へ。

あなたの存在が、どれほどの光だったか。

この小さな魂の声が、どうか届きますように。

体験記🙇‍♂️

この子について 〜見えなかった涙と「ありがとう」の想い〜

この子は、ずっと愛を求めていました。

小さな心では抱えきれないほどの寂しさと孤独を、毎日ひとりで耐えていたのです。

お父さんとお母さんは、よく喧嘩をしていたようで、

やさしい言葉や、あたたかなまなざしを受けることは、あまりありませんでした。

病室の中で過ごす日々。

窓から差し込む光と青い空、ゆれるカーテンだけが、この子の世界でした。

この子の心は、ぽっかりと穴があいたまま、ずっと探し続けていたのです。

「ぼくを見てほしい」

「ここにいるよって、気づいてほしい」

そんな気持ちから、何度も試すように、

意地悪なことを言ったり、心をざわつかせるような行動をしたこともありました。

――本当はただ、ぎゅっと抱きしめてほしかっただけ。

「だいじょうぶだよ」って、誰かに言ってほしかっただけ。

やさしくしてくれた看護師さんたちに、

この子はずっと、感謝を伝えたかったのです。

体が動かず、言葉も出せず、

「ありがとう」と言えなかった日々の中で、

その想いだけが、魂の奥に残っていました。

そしてようやく今、

その想いをことばにすることができました。

最後には、自ら望んで道をすすんでいきました。

笑顔で自由になれた喜びと大空を大きく飛んでいくような彼の姿が見えました。

めったにないことですが――

お父さんが、迎えに来てくれたのです。

この子の目には、涙ではなく、

あたたかな安堵と、満ち足りた光が宿っていました。

この小さな魂の「ありがとう」が、

あの時寄り添ってくれた看護師さんたちへ。

そして、今もどこかでがんばっているすべてのナースさんたちへ。

どうか、届きますように。

英語バージョン

中国語バージョン